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いや、説明とか苦手です
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 「憂鬱を溶かそう」
 いきなりMが言った。
 Mの隣には無駄に高級そうな革ジャンが全然似合っていないモーと、
 そして、僕のとなりには何故かoが陣取っていた。
 まるで、決して逃がさないとでも言うかのように、がっちりと僕の右腕をロックしている。
 「放して」
 「放しません」
 「話せばわかる」
 「話しません」
 没交渉状態。
 もがくように身体を揺すると、oの胸が僅かに僕の腕に触れた。おおう。やってる場合か。
 
 午前10時を少し回った頃。
 まだ6月だというのに宮崎の蒸し暑さは真夏のようだった。しかも多湿。
 身にまとう空気ですら、じっとりと湿っているような錯覚に襲われる。いや、錯覚じゃないのか。
 実際に湿度は高い。部屋の窓を開けても、申し訳程度に生温い風が入ってくるだけで、
 まったくもって糞っ垂れな具合である。fu☆k!
 さながら老婆の尿をたっぷりと染み込ませたオムツが辺り一面にばら撒かれたような状態だった。
 そんな状態を打破すべく、僕は下半身はジーパン、上半身は裸というスタイルで、
 耳にヘッドホンを装着し、エミネムを聴きながら、だいぶ昔に諦めて、それ以降、すっかり埃を被ったアコースティックギターで素振りをしていた。
 「おらっ」
 ぶおん。
 なんだか破壊的なパンクロッカーになったような気分だった。悪くないね。
 いや、実際は無職の文系なのだけど。
 くそっ、不景気のせいだ!
 「さんじゅういーち!」
 ぶおん。
 いや、まあ、本当はわかっている。自分のせいだ。
 すべての責任は自分自身に収束する。
 でも、なんかさあ!
 なんか、うまく言えないけど、しんどいんだよ!
 まるで、病み上がりみたいに!
 「さんじゅーにーぃ!」
 ぶおん。
 学生でも、社会人でもない、いまの不安定な状態はさあ!
 ふわふわしてて頼りない感じはさあ!覚束ねえ感じはさあ!
 冬目景の”イエスタデイをうたって”をリアルに再現するのはさあ!
 「さんじゅーさあん!」
 ぶおん。
 あー、なんかテンション上がってきた。ちょっと楽しくなってきた。
 でも、掌に弦が擦れて痛い。でも、僕の心のほうがもっと痛い!なんつって!
 なんつって、だってさ!弾みとはいえ、キモいっつーの!つーか、やけくそだっ!
 「さんじゅーよんっ!」
 ぶおん。
 うおお、なんか・・・、なんか見えそうだ!わかりそうだ!掴めそうだ!
 「さんじゅーごっ!」
 ぶおん。
 
 そのとき。
 
 がちゃり、と。ノブが回って。
 前触れもなく、いきなり玄関のドアが開いた。
 ちなみに、僕が居たのは一階のリビングなので、途中に短い廊下を中継するが、
 玄関からは、ほぼ丸見えである。ワンルームのアパートを想像してもらえばわかりやすいと思う。
 ギターを振り抜いたままの状態で硬直する僕。
 「え?」
      

 なんで、いきなりドアが開くの。鍵は昨日の夜きっちりと閉めたはずだけれど。
 いや、待てよ。朝、新聞を取りに行ったときに開けたかも?開けたかな?
 いやいや、そんなことはどうでも良い。誰だ?いったい誰が来たんだ?
 宅配便か?そんなの注文していない。
 郵便家?ダイレクトメールとか?いや、それなら直接ポストに投函するはずだ。
 じゃあ、誰だ?いったい誰なんだ・・・?

 まず、最初に姿を現したのはMだった。
 Mは大学の同期生で、いまは派遣会社に登録してイベントの設営スタッフなどをしているらしい。
 Mは、ぱくぱくと口を動かして、何か言っているみたいだが全く聴こえない。
 
 次に姿を現したのはモーだった。
 モーは大学の後輩で、一年年下の男子。
 中肉中背で、いかにも凡庸オーラを発しているのだが、やたらと眼だけはきらきらと輝いている。
 あだ名の由来は不明で、いつの間にかモーと呼ばれていた。
 確か、サークルの新歓コンパのときに何かあったような気がするのだが、なぜか全く記憶に残っていない。
 
 最後に姿を見せたのはoだった。
 oは、やたらと慇懃無礼というか、敬語で毒舌を吐く女子で、正直、傷付けられた思い出しかない。
 小柄だがロリではない。狼を毒舌で泣かす赤ずきんという感じ。ちなみに、モーとoは同期である。
 対戦格闘ゲームーーーいわゆる格ゲーが超絶に上手く、特にギルティギアシリーズでは滅多に勝てない。持ちキャラはブリジット。KOFなら不知火舞。ストⅡ系ならザンギエフ。ひとりだけ仲間外れがいる気がするのだけど・・・。




 Mがジェスチャーで、頭から何かを外す動作をする。
 ああ、ヘッドホンか。そういえば付けっぱなしだった。どうりでエミネムしか聴こえないわけだ。
 ヘッドホンを外そうとしたとき、Mが、今度は掌を開いた状態で前に出した。
 ”待て”、のように見える。
 ヘッドホンから手を離すと、Mは、うんうんと頷いてみせた。
 どうやら正解だったらしい。
 Mは、おもむろに携帯電話を取り出して、何かの操作をすると、すぐに僕に差し出した。
 携帯電話はテキストメモのアプリケーションが起動した状態になっており、
 そこには、
 『ジェスチャーゲームをするぞ!』
 という簡素な文面。
 携帯の液晶から顔を上げると、Mは、めちゃくちゃ楽しそうな顔をしていた。
 えぇー・・・。
 Mは僕から携帯を取り上げると、他の二人にも同じように携帯の画面を見せる。
 反対しろー、反対しろー、と僕は祈ったが、その甲斐もなく、二人とも縦に頷いていた。
 マジかよ・・・。
 まあ、どうせ暇なんだけどさ。
 ていうか、お前ら何しに来たの。
 あと、そろそろシャツか何か着たいのだけど。
 どうしようかなー、と思っていると、Mが再び携帯を差し出してきた。
 『そういえば、お前、ギター持ってなにしてたの』
 僕は返信するために、一旦、テキストメモをすべてクリア。
 少し考えて、返信を打ち込む。
 『なにしてたんだろうな・・・』
 本当に。
 ギターで素振りって。僕は馬鹿か。意味が解らない。
 ギターの弦で擦りむいた掌が、ひりひりと痛んだ。












 
 




 ーーーpert.2に続く。
 まさか続くとは・・・。
 なんで続くんだろう。
 書いてるうちに、どんどん余計な描写していっちゃうんだよなあ・・・。
 あと、ヘッドホン描くの忘れた・・・。

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宮崎在住の22歳。
趣味は曲学阿世。
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